2025年8月最新版:AIモデル性能比較の決定版を作ってみました
2025.08.27
AI業界の進化は止まることを知りません。
6月版の記事から2ヶ月が経過し、この短期間でさらなる革命的な進歩が起きました。
OpenAI GPT-5の正式リリース、Claude Opus 4.1の大幅強化、そしてxAI Grok 4の衝撃的なデビューなど、まさに頂上決戦の様相を呈しています。
そこで今回、2025年8月27日時点での最新情報を徹底的に調査し、主要AIモデルの性能を5つの重要ベンチマークで比較した最新版の表を作成しました。
特に注目すべきは、GPT-5が数学分野で完璧に近い94.6%(AIME 2025)を達成したこと、Grok 4が90.6%で数学競技での新記録を樹立したこと、そしてClaude Opus 4.1がコーディング分野で74.5%(SWE-Bench)という驚異的なスコアを更新したことです。
主要ベンチマーク別性能スコア比較表
国・地域 | モデル名 | MMLU (言語理解) |
SWE-Bench (コーディング) |
GPQA (科学推論) |
AIME (数学) |
HumanEval (コーディング) |
総合評価 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
🇺🇸 アメリカ | GPT-5 | 90.2% | 74.9% | 88.4% | 94.6% | 88.5% | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | Grok 4 Heavy | 88.5% | 75.0% | 87.5% | 100% ※ | 90.0% | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | Claude Opus 4.1 | 87.9% | 74.5% | 83.5% | 78.0% | 89.1% | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | Grok 4 | 85.2% | 72.0% | 88.9% | 90.6% | 79.4% | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | Gemini 2.5 Pro | 89.8% | 63.8% | 84.0% | 86.7% | 70.4% | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | Claude Sonnet 4 | 83.7% | 72.7% | 79.8% | 72.5% | 85.3% | ⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | OpenAI o4-mini | 85.2% | 68.1% | 81.4% | 93.4% | 83.2% | ⭐⭐⭐⭐ |
🇨🇳 中国 | DeepSeek R1-0528 | 84.9% | 55.7% | 81.0% | 87.5% | 79.3% | ⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | OpenAI o3 | 87.9% | 69.1% | 87.7% | 91.6% | 88.5% | ⭐⭐⭐⭐ |
🇺🇸 アメリカ | Gemini 2.5 Flash | 80.9% | 58.2% | 76.3% | 83.5% | 72.1% | ⭐⭐⭐ |
※ Grok 4 Heavyは特定の数学競技で100%達成(AIME 2025の一部問題セット)
各ベンチマークの詳細解説
📊 MMLU(Massive Multitask Language Understanding)
評価内容: 57分野にわたる総合的な知識理解力を測定
問題例: 数学、歴史、コンピュータサイエンス、法律、医学など幅広い分野の多肢選択問題
人間専門家レベル: 約89.8%
注目ポイント: GPT-5が90.2%で首位を獲得し、人間専門家レベルを初めて明確に突破しました。
Gemini 2.5 Proも89.8%と人間レベルに到達し、知識理解分野での激戦を演出しています。
💻 SWE-Bench(Software Engineering Benchmark)
評価内容: 実世界のソフトウェア開発・バグ修正能力
問題数: 2,294問(実際のGitHub Issueから作成)
特徴: DjangoやPythonライブラリの実際のバグ修正タスク
注目ポイント: Claude Opus 4.1が74.5%で新記録を達成!前バージョンから2ポイント向上し、実世界のコーディング能力でトップに立ちました。
GPT-5も74.9%と僅差で追随し、開発者向けAIの新時代を切り開いています。
🧪 GPQA(Graduate-level Physical and Quantitative Assessment)
評価内容: 博士号レベルの科学的推論能力(物理・化学・生物学)
問題数: 448問の高難度選択問題
人間専門家レベル: 約65-70%
特徴: Google検索でも解けない「Google-proof」な問題として設計
注目ポイント: GPT-5が88.4%を記録し、人間の博士号レベル専門家を大幅に上回りました。
Grok 4も87.5%~88.9%と高スコアを記録し、科学推論分野での熾烈な競争が続いています。
🔢 AIME(American Invitational Mathematics Examination)
評価内容: 高度な数学的問題解決能力
レベル: 全米数学オリンピック予選レベル
トップ500レベル: 83%以上のスコア
注目ポイント: 数学分野で歴史的な快挙!GPT-5が94.6%、o4-miniが93.4%と90%台に突入し、Grok 4が90.6%、Grok 4 Heavyが完璧な100%を達成しました。
AIが人間の数学エリートを完全に凌駕した瞬間です。
🐍 HumanEval
評価内容: Pythonプログラミング能力
問題数: 164問の関数実装タスク
特徴: 実行可能なコードの生成能力を評価
注目ポイント: Grok 4 Heavyが90.0%で最高スコアを記録。
Claude Opus 4.1も89.1%と高い実践的コーディング能力を示し、AIプログラマーの実用性が飛躍的に向上しています。
💰 コストパフォーマンス分析
🥇 GPT-5 – 性能と価格の新バランス
- 価格: $1.25/$10(入力/出力 per 1M tokens)
- 特徴: 最高クラスの性能を低価格で実現、価格競争の火付け役
🥈 DeepSeek R1-0528 – オープンソースの星
- 価格: $0.55/$2.19(入力/出力 per 1M tokens)
- 特徴: 商用利用可能なMITライセンス、87.5%のAIMEスコア
🥉 Gemini 2.5 Flash – 超高コスパ継続
- 価格: $0.15/$0.60(入力/出力 per 1M tokens)
- 特徴: 1M トークンの巨大コンテキストで最安値クラス
💸 プレミアム価格帯
- Claude Opus 4.1: $15/$75(最高のコーディング性能)
- Grok 4 Heavy: $300/月(エンタープライズ専用、5つのエージェント並列実行)
- Grok 4: $3/$15(256Kトークンコンテキスト)
- Gemini 2.5 Pro: $2.50/$15(1Mトークンコンテキスト)
🎯 用途別推奨モデル
🔬 研究・学術用途
- GPT-5 – 科学推論88.4%、数学94.6%の最高水準
- Grok 4 Heavy – 数学で100%達成、複数エージェント並列処理
- Claude Opus 4.1 – 持続的な長時間タスクに最適
- Gemini 2.5 Pro – 1Mトークンで大量文献解析
💼 ビジネス・実用用途
- GPT-5 – バランス良く幅広いタスクに対応
- Claude Sonnet 4 – 無料でも利用可能、高コスパ
- Gemini 2.5 Pro – マルチモーダル対応で実用性抜群
- DeepSeek R1-0528 – オープンソースで自由度最大
👨💻 プログラミング・開発用途
- Claude Opus 4.1 – SWE-Benchで世界最高の74.5%
- GPT-5 – 74.9%で総合的なコーディング支援
- Grok 4 Heavy – 90.0%のHumanEvalスコア
- Claude Sonnet 4 – 72.7%で高コスト効率
💡 コスト重視
- DeepSeek R1-0528 – 最高コスパかつオープンソース
- GPT-5 – 高性能ながら価格破壊的な$1.25/$10
- Gemini 2.5 Flash – 超高速処理で最安値クラス
📈 2025年8月のAI業界トレンド
🔥 主要な変化
GPT-5の価格革命: OpenAIが$1.25/$10という破格の価格設定を実現し、業界全体の価格競争を激化させました。
「最高の性能を民主的な価格で」という新戦略です。
数学分野の完全制覇: AIME 2025でGPT-5が94.6%、Grok 4 Heavyが100%を達成し、AIが人間の数学エリートを完全に超越した歴史的瞬間となりました。
コーディングの新次元: Claude Opus 4.1の74.5%(SWE-Bench)とGPT-5の74.9%により、実世界のソフトウェア開発でAIがより実用的なレベルに到達しました。
推論モデルの標準化: 全ての主要モデルで「思考」機能が実装され、単なる「回答」から「深い推論プロセス」へと進化が完了しました。
オープンソースの反撃: DeepSeek R1-0528がMITライセンスで商用利用可能となり、エンタープライズでのオープンソースAI活用が現実的な選択肢になりました。
🌟 8月の特筆すべきアップデート
GPT-5の統合AI体験: リアルタイムルーターにより、タスクの複雑さに応じて自動的に高速/深思考モードを切り替える革新的システムを実装。
Grok 4の”Big Brain”モード: Heavy版では5つのGrok 4エージェントが並列実行し、最も困難な問題に対して集合知的アプローチを実現。
Claude Opus 4.1の精密進化: GitHub統合によりワンクリックでプルリクエスト生成、75%のSWE-Benchサイズ問題を自動解決可能に。
Gemini 2.5の音声革新: 24言語対応のネイティブ音声出力、アクセントや表現の細かな制御が可能。
DeepSeek R1-0528の企業向け機能: JSON出力対応、関数呼び出し機能、45-50%のハルシネーション削減を実現。
⚠️ 選択時の注意点
価格戦争の加速: GPT-5の低価格設定により業界全体で価格競争が激化。
一見安く見えても、推論トークンで実際のコストは数倍になる可能性があります。
ベンチマーク論争の継続: Grok 4の100%AIME結果について、測定方法や問題セットの選択をめぐり議論が続いています。
コンテキスト制限の多様化: GPT-5の400K、Gemini 2.5 Proの1M、Grok 4の256Kなど、用途に応じた選択が重要です。
「思考」機能のコスト: 全モデルで推論トークンも課金対象となるため、複雑なタスクでは表示価格の3-5倍のコストが発生することも。
モデルの急速な更新: 月単位でのアップデートが常態化し、最新情報の継続的な確認が必須となっています。
エンタープライズ考慮事項: オープンソース(DeepSeek)vs商用ライセンス(GPT-5、Claude)vs エンタープライズ専用(Grok 4 Heavy)の選択が重要。
🚨 GPT-5の実用性における課題
ベンチマークでは優秀なスコアを記録するGPT-5ですが、実際の使用においていくつかの問題点が指摘されています:
レスポンス速度の問題: 高性能な反面、応答速度が遅く、リアルタイムでの対話には不向きな場面があります。
特に複雑な推論モードでは数十秒待たされることも。
UI/UXの使いにくさ: 新しいResponses APIの仕様により、従来のChat Completions APIに慣れた開発者には使いづらい設計となっています。
コスト予測の困難性: 「思考」トークンが予想以上に消費され、実際の請求額が見積もりの3-5倍になるケースが頻発しています。
過度に冗長な回答: ベンチマーク重視の設計のため、シンプルな質問にも過度に詳細な回答を返し、実用性を損なう場面があります。
API制限の厳しさ: レート制限が厳しく、本格的な商用利用では頻繁にリクエストが拒否される問題が報告されています。
これらの理由から、ベンチマークスコア ≠ 実用性という現実を認識し、実際の用途に合わせた慎重なモデル選択が重要です。
📚 参考資料・出典情報
本記事は以下の信頼できる情報源を基に作成されています:
公式発表・技術文書
- OpenAI公式発表 – GPT-5のベンチマーク結果とアーキテクチャ詳細
- Anthropic公式データ – Claude Opus 4.1の改良点と性能向上
- xAI公式情報 – Grok 4シリーズの技術仕様と評価結果
- Google DeepMind – Gemini 2.5シリーズの最新機能
- DeepSeek AI – R1-0528のオープンソース化と改良内容
独立評価機関
- Artificial Analysis – AIモデルの独立評価分析
- Epoch AI – 数学・推論能力の厳密な評価
- VALS AI – 最新ベンチマーク結果の追跡
- LMArena – コミュニティベースの総合評価
- Aider Polyglot – コーディング能力の実践的評価
学術・研究資料
- arXiv.org – 最新のAI研究論文とベンチマーク手法
- Independent Benchmarks – サードパーティによる検証結果
- FrontierMath – 数学能力の極限測定
データの信頼性について
本記事で使用されているベンチマークスコアは、2025年8月27日時点での最新情報に基づいています。
AI業界は週単位で進化しているため、最新の情報については各公式サイトをご確認ください。
TL;DR: GPT-5が価格革命と性能向上を同時達成、Grok 4が数学で完璧なスコア、Claude Opus 4.1がコーディング最高峰。
ただしGPT-5は使い勝手に課題あり。
オープンソースのDeepSeek R1-0528も健闘。
選択肢が増えた分、用途に応じた戦略的な選択がより重要になりました。
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