なぜCities: Skylines 2はここまで重かったのか――その答えが、ついに開発トップの口から語られました。
【徹底分析】なぜCities: Skylines 2は“重い”のか?CEO証言と組織の変遷から見えた「Unity依存の誤算」とシリーズの岐路
2026年3月、都市開発シミュレーションの金字塔『Cities: Skylines(CS)』シリーズを愛するプレイヤーたちは、かつてない複雑な心境の中にいます。初代の発売から11周年を祝う華やかなムードが漂う一方で、最新作『CS2』の最適化不足に関する衝撃的な証言が飛び出し、同時に「安定」の象徴だった初代のアップデートがMOD環境を破壊するという事態が起きています。
この混乱は、単なるバグや不運の連続ではありません。私たちが愛した「開発者の顔が見えるフレンドリーなゲーム」が、巨大な資本と分業体制、そして技術的なボタンの掛け違いによって、どのように変貌してしまったのか。公開された最新データと証言をもとに、その「構造的問題」の正体を冷徹に読み解いていきます。
1. 重要な証言:なぜ『CS2』は産みの苦しみを味わったのか
2026年3月19日、AUTOMATON(元ソース:PC Gamer)が報じた元開発元・Colossal Order(以下CO)のCEOによるインタビューは、発売以来ユーザーが抱き続けてきた「なぜこれほど重いのか」という疑問に対する、極めて重要な証言となりました。
「未成熟な土台」での設計という、技術的な誤算
CEOが明かしたのは、Unityの新技術(Entities/ECS等)への過度な依存という、開発初期の戦略的ミスでした。ここで、技術的な時系列(ファクト)を整理してみましょう。
- 2022年12月: Unity Entities 1.0が「Production-Ready(実用可能)」として案内される。
- 2023年6月: Unity 2022.3 LTSが登場し、Entities/ECS 1.0をLTS(長期サポート)サイクルで安定運用しやすく、バグ修正が行き渡る環境が整う。
- 2023年10月: 『Cities: Skylines 2』発売。
核心的な技術がLTS環境で安定し始めたのと、ほぼ同時期の発売。CEOは「未実装の機能を前提に設計してしまったため、自前実装が増えた」と語っています。本来はゲームエンジン側が解決すべき複雑な物理計算や描画処理を、わずか33人の小規模チームが独自コードで構築せざるを得なかった事実は重く、その結果、後の最適化を著しく難しくする「技術的負債」につながった可能性が高いといえます。CS2の不調は“偶然”ではなく、構造的に起きた問題だった可能性が高いのです。
2. 組織の変遷:データで見る「4社の実像」
私たちが接する「開発会社」の姿は、いま劇的に変化しています。公開されている最新データ(2026年3月時点)から、シリーズに関わる各社の立ち位置を比較してみましょう。
| 会社名 | 役割 | 規模 | 資本関係・立ち位置 |
|---|---|---|---|
| Paradox Interactive | パブリッシャー | 約660名 | シリーズIP所有者。スウェーデン上場企業。 |
| Colossal Order (CO) | 元開発 | 33名 | 独立スタジオ。少数精鋭の職人集団。 |
| Iceflake Studios | 現CS2開発 | 非公表 | Paradox完全子会社。2026年より開発を継承。 |
| 外部パートナー | CS1保守・拡張 | 複数 | Tantalus Media等、移植や保守実績を持つ外部スタジオ。 |
ここに見えるのは、「33人の職人によるこだわり(CO)」から、「親会社直轄や外部専門組織による分業体制」への移行という構造的な変化です。この巨大資本による管理体制へのシフトが、かつてのシリーズが持っていた「空気感」を変えた決定的な要因と言えます。
3. 「開発者の顔」とコミュニケーションの変容
多くの古参ファンが抱いている「以前の体制の方がフレンドリーだった」という感覚。これは単なるノスタルジーではなく、組織構造の変化からくる必然的な結果です。
直接の対話から、組織の「管理された広報」へ
かつてのCO時代、33名のチームはCEO自らが「Word of the Week」といった週報を書き、ユーザーに直接語りかけていました。開発者の体温が伝わる距離感、ある種の「共にゲームを育てている感覚」がそこには確かに存在していました。
しかし、現在CS2を担当するIceflake StudiosはParadoxの完全子会社です。上場企業のブランド管理下に置かれ、広報の窓口はパブリッシャーに一本化されます。自由な発言は「リスク」となり、結果としてユーザーには「コミュニケーションが事務的になった」と映るようになりました。また、CS1の保守に携わる外部組織は、そもそもコミュニティと直接会話する役割を担っていません。シリーズが「個人の顔が見える仕事」から「組織的なプロジェクト」へと変貌した副作用が、今の不透明感に繋がっているのです。
4. 経営の視点:CS1アップデートがもたらした「摩擦」
なぜ安定していたCS1に、MOD環境を揺るがすほどの大規模なアップデート(Race Day等)が今さら入ったのか。そこにはパブリッシャー側の切実な経営事情が透けて見えます。
[Paradox 2025年度通期報告]: 営業利益悪化の最大要因は他タイトル(Bloodlines 2)の償却・減損ですが、CS2も発売後の不振や返金対応で収益面の逆風にさらされています。
Paradox Interactive Year-End Report 2025より要約
[収益の柱としてのCS1]: 同報告書では、Q4の収益寄与タイトルとして依然として『Cities: Skylines』と『Cities: Skylines II』の双方が挙げられています。
CS2が体制立て直しを急ぐ中、IP(知的財産)の価値と収益を維持するために、安定したCS1へ新機能を投入する判断は、経営安定化やIP維持に資する経営判断であった可能性が高いでしょう。一方で、その際に生じるMOD互換への影響がどこまで許容されたリスクだったのかは、公開情報だけでは断定できません。しかし、結果として長年愛されてきた「MODの安定性」が、経営のスピード感に置き去りにされた事実は否定できないでしょう。
結び:愛するシリーズが「持続可能」であるために
私たちは今、大きな過渡期の中にいます。
- 『Cities: Skylines 2』は、独立スタジオが抱え込みすぎた技術的課題を、親会社の直轄チームが解きほぐしている最中です。
- 『Cities: Skylines (初代)』は、外部パートナーの手によって、限界を超えた「現役復帰」をさせられています。
私が切に願うのは、ただ一つ。「好きなゲームが続いてほしい」ということです。現在の巨大化した組織が、かつてのCOが持っていた「ユーザーとの信頼関係」を、組織的な誠実さによって再構築できるかどうかが、シリーズの未来を左右します。
CEOが公式に「誤算」を認めたことは、問題を隠すのではなく、事実を認めて修正するフェーズに入ったという希望の光でもあります。私たちは、このシリーズが「職人の熱量」と「組織の安定」を両立させる新しい姿に脱皮するのを、もう少しだけ見守っていく必要がありそうです。


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