サイト関連

Complianz導入でGoogle Analytics死亡|GDPR対応でアクセス解析が1/10に激減した失敗談

はじめに:プラグイン競合から始まった悲劇

サイト運営において、一つの問題を解決したら別の問題が発生する——これは長期運営サイトの宿命とも言えるでしょう。
今回お話しするのは、GDPR対応のためにCookieプラグインを変更したところ、Google Analyticsのデータが壊滅的な状況になってしまった実体験です。

前回の記事でお伝えしたLCP改善作業でWP Fastest Cacheを導入したのですが、これが既存のCookie Notice系プラグインと競合してしまい、サイトが正常に動作しなくなってしまいました。
仕方なく代替プラグインを探すことになったのですが、これが思わぬ結果を招くことになったのです。

GDPR対応の必要性:EUユーザーへの配慮

そもそもなぜCookie Noticeプラグインを使用していたかというと、GDPR(EU一般データ保護規則)への対応が目的でした。

「日々綴」は主に日本国内のユーザーを対象としたサイトですが、少数ながらEU圏からのアクセスも存在します。
完全に無視できる数値ではないため、一応のコンプライアンス対応として Cookie Notice系のプラグインを導入していました。

WP Fastest Cacheとの競合問題が発生した際、「どうせなら、よりしっかりとしたGDPR対応ができるプラグインに変更しよう」と考え、評価の高いComplianzプラグインを選択することにしました。

Complianz導入:より本格的なコンプライアンス対応

Complianzは、GDPR対応に特化した本格的なプラグインとして知られています。
従来使用していたシンプルなCookie Noticeプラグインと比較して、以下のような特徴がありました:

  • より詳細なクッキー分類と管理
  • ユーザーの同意取得プロセスの最適化
  • 各種解析ツールとの連携機能
  • 法的要件への包括的な対応

導入作業自体は比較的スムーズに完了しました。
設定はデフォルトのまま使用し、サイト上にはより洗練されたクッキー同意バナーが表示されるようになりました。

設定時の失敗:メールアドレス公開による迷惑メール被害

ここで一つ大きな失敗をしてしまいました。
Complianzの設定過程でメールアドレスを入力する項目があり、何も考えずに入力してしまったところ、そのメールアドレスがサイト上に一時的に公開されてしまったのです。

その結果、公開されたメールアドレス宛に迷惑メールが届くようになってしまいました。
重要な教訓:Complianzにメールアドレスを入力してはいけません!

「これでGDPR対応は万全だ」と安心していたのですが、数日後にGoogle Analyticsを確認して愕然としました。

衝撃の結果:アクセス解析データが1/10に激減

Complianz導入後、Google Analyticsの数値に異変が起こりました:

  • 導入前:300~400ユーザー/日
  • 導入後:30~40ユーザー/日

なんと、アクセス解析で捉えられるユーザー数が約1/10に激減してしまったのです。

最初は「一時的な不具合かもしれない」と思い様子を見ていましたが、日を追うごとにこの数値が定常状態であることが明らかになりました。
20年間サイトを運営してきた中で、こんな急激な変化は初めての経験でした。

原因分析:日本人のクッキー拒否率の高さ

この異常事態の原因を調査した結果、驚くべき事実が判明しました。
Complianzによって表示されるクッキー同意バナーに対して、大多数のユーザーがクッキーの使用を拒否していたのです。

どうやら日本のユーザーは、クッキー同意に対して非常に慎重(あるいは拒否的)な傾向があるようです。
いくら調査しても、日本人ユーザーの多くは「クッキーはいやだ」という反応を示していました。

これは文化的な違いもあるのかもしれません。
EU圏では GDPR施行以降、クッキー同意バナーが日常的になっていますが、日本ではまだそれほど一般的ではありません。
そのため、突然現れた同意バナーに対して警戒心を抱くユーザーが多いのではないでしょうか。

他システムへの影響調査:意外な結果

Google Analyticsの壊滅的な数値を受けて、他のシステムへの影響も調査しました:

サーバーアクセスログ

結果:変化なし

サーバー側のアクセスログを確認したところ、従来と変わらない数値を記録していました。
つまり、実際のサイト訪問者数に変化はなく、単純にクッキーベースの解析が機能しなくなっただけということが判明しました。

Google AdSense

結果:影響軽微

元々の収益が数円~20円以下という微々たるものだったこともあり、AdSenseの収益に大きな変化は見られませんでした。
クッキー拒否がAdSenseの配信に与える影響は、予想よりも小さかったようです。

影響を受けたのはGoogle Analyticsのみ

結果として、Complianz導入による直接的な影響を受けたのは、Google Analyticsによるユーザー追跡のみでした。
サイト自体の機能やその他の解析ツールには大きな影響はありませんでしたが、サイト運営における重要な指標であるアクセス解析データが使えなくなったことは、運営上大きな痛手でした。

現在のジレンマ:コンプライアンス vs 実用性

この状況を受けて、現在は大きなジレンマを抱えています。

コンプライアンス重視の場合

  • GDPR等の法的要件への適切な対応
  • ユーザーのプライバシー保護を最優先
  • 国際的な基準に準拠したサイト運営

実用性重視の場合

  • サイト運営に必要なデータの確保
  • ユーザー行動の分析によるコンテンツ改善
  • 効果的なサイト運営の継続

EU圏からのアクセスは確実に存在するため、完全にGDPR対応を無視するわけにもいきません。
一方で、主要ターゲットである日本のユーザーの行動分析ができない状況は、サイト運営上非常に困ります。

今後の方針:現状維持から一転、無効化を決断

様々な選択肢を検討した結果、一度は現状のままComplianzを継続使用するという判断に至りました。

当初の判断理由

  1. リスク回避の重要性
    現在EU圏からのアクセスはほとんどありませんが、「何かあったらめんどくさい」というのが正直な気持ちでした。
    実際にGDPR違反で何かトラブルになることがあるのかは不明でしたが、可能性がゼロでない以上、保険として残しておこうと考えていました。
  2. 現実的な妥協点
    Google Analyticsのデータが大幅に減少したのは痛手でしたが、サーバーログによる基本的なアクセス状況は把握できています。
    完璧ではないものの、最低限のサイト運営は可能でした。

しかし、現実的な再評価により方針転換

しかし、改めてリスクと効果を冷静に分析した結果、Complianzを無効化するという決断に至りました。

リスクの現実的な評価

  • 個人サイトでのGDPR制裁事例:調査した限り、個人ブログが制裁を受けた事例はほぼ存在しない
  • EU圏アクセス数:実際にはほとんど皆無に等しい状況
  • 規制当局の方針:明らかに大企業を対象としており、個人サイトまで監視する体制にない
  • 制裁の可能性:宝くじに当たるレベルの極小リスク

実用性の重要度

  • Google Analyticsの価値:サイト運営における重要指標(300-400→30-40ユーザー/日の激減)
  • ユーザー体験:不要なクッキーバナー表示による離脱の可能性
  • 運営効率:アクセス解析データなしでは適切な改善が困難

最終決断

これらの要因を総合的に判断した結果、極めて小さなリスクのために重要な運営データを犠牲にするのは合理的ではないと結論づけ、Complianzプラグインを無効化することにしました。

プラグインは削除せず無効化にとどめているため、万が一何らかの問題が発生した場合は、即座に再有効化して元の状態に戻すことが可能です。

ユーザーからの反応

興味深いことに、Complianz導入によるクッキー同意バナーの表示について、ユーザーからの問い合わせや苦情は一切ありませんでした。
多くのユーザーがクッキーを拒否していることは数値からも明らかでしたが、サイト利用自体に大きな支障はない様子でした。

まとめ:理想と現実のギャップと実用性の選択

今回のComplianz導入から無効化までの一連の体験は、「理想的なコンプライアンス対応をしたら実用性が完全に失われ、最終的に現実的な判断が必要になった」という典型的な事例となりました。

無効化後の結果について

Complianzを無効化してから数日が経過しましたが、Google Analyticsの数値がどの程度回復するかはまだ確認できていません。
数日後には結果が明らかになる予定ですが、理論的にはクッキー同意バナーが消えることで、従来通りのアクセス解析が可能になるはずです。

学んだこと

  1. リスクの現実的評価の重要性:理論的なリスクと実際の発生可能性は大きく異なる
  2. 文化的差異の重要性:EU基準のソリューションが必ずしも日本で機能するとは限らない
  3. 段階的導入の必要性:いきなり本格的なツールに変更するリスク
  4. 実用性と理想のバランス:完璧な対応よりも現実的な運営継続が重要
  5. 柔軟な方針変更:一度決めた方針でも、状況に応じて見直すことの大切さ

長期運営サイトへの教訓

20年間サイトを運営してきた経験から言えることは、「完璧な解決策は存在しない」ということです。
特に法的要件と実用性の間には、しばしば大きなトレードオフが存在します。

重要なのは、自サイトのユーザー層と運営目標を明確にし、それに基づいて現実的な判断を下すことです。
全ての問題を一度に解決しようとせず、優先順位を明確にして段階的に対応することが、長期的な成功につながるのではないでしょうか。

今回の経験を通じて、「なんかあったらめんどくさい」という曖昧な不安も、サイト運営における重要な判断要素の一つだと実感しました。
実際にGDPR違反で問題になるケースがどの程度あるのかは不明ですが、リスクの可能性がある以上、保険として対策を継続する価値はあると考えていました。

しかし最終的には、現実的な利益とリスクを天秤にかけ、実用性を選択する決断に至りました。
同様の問題に直面している方々の参考になれば幸いです。

タイトルとURLをコピーしました