レビュー記事

セールとの出会いが招いた『絶対可憐チルドレン』沼 ―他の作業を忘れるほど面白かった―

『絶対可憐チルドレン』読破レビュー:17年の軌跡を振り返る

はじめに:思いがけない再会

DMMの電子書籍で1万円以上25%オフのクーポンと、小学館作品50%ポイント還元という破格のセールに出会いました。
38巻まで単行本で読んでいた『絶対可憐チルドレン』の続きを、この機会に39巻から63巻まで一気購入。
読み始めたら止まらず一気に完結まで読破してしまいました。
そのせいで記事が書けませんでした。

作品の魅力:時とともに深まる物語

本作の最大の特徴は、連載17年の歳月を存分に活かした展開にあります。
2004年の連載開始時、主人公の「ザ・チルドレン」こと明石薫、野上葵、三宮紫穂は10歳の小学生でした。
彼女たちは世界最強クラスの超能力者でありながら、年相応の子供っぽさや未熟さを持つ魅力的なキャラクターとして描かれます。


物語は単なる超能力バトルに留まりません。
時とともに少女たちは確実に年を重ね、体も心も成長していきます。
この「実際の時間経過」を取り入れた構造により、読者は文字通り彼女たちの成長を見守ることになります。


深まりゆく人間ドラマ

特筆すべきは、年齢を重ねるごとに広がる人間関係と、それに伴う心理描写の深まりです。
当初は指揮官の皆本光一に頼り切りだった3人が、次第に自分たちで考え、判断し時には大人たちの意見に異を唱えるようになっていく過程は非常に印象的です。


敵対組織として登場する「パンドラ」や「黒い幽霊」との関係性も、単純な善悪の対立を超えて複雑に発展していきます。
特に「パンドラ」のリーダー・兵部京介との関係は、敵対しながらも互いを理解し合っていく展開が秀逸でした。


壮大な世界観と予言の重み

物語の核心部分には「チルドレンたちが引き起こす破滅の未来」という予言が据えられています。
しかしこの予言は、物語が進むにつれて少しずつ形を変えていきます。
これは単なるプロットの変更ではなく、登場人物たちの選択や成長によって未来そのものが書き換えられていくことを表現しているのです。


後半はギリアムとの戦いが中心となり、若干展開が単調に感じられる部分もありました。
しかしこれまで積み重ねてきた人間関係や心理描写があったからこそ、最終的な結末に説得力が生まれたとも言えます。


完結から見える価値

完結編では力による解決ではなく相互理解を選ぶチルドレンたちの姿が印象的でした。
これは17年という時間をかけて少しずつ描かれてきた、彼女たちの「本当の強さとは何か」という問いへの答えだったように思います。
最後は愛で締めくくられてましたしね。


単行本派として38巻まで読んでいた私が今回39巻から最終巻まで一気読みして特に感じたのは、作者・椎名高志の計算された構成力です。
一見すると気ままに描かれているような展開も実は17年後の結末に向けた伏線として機能していたことが分かります。


おわりに:17年の重み

本作の真髄は、「超能力」という非現実的な要素を通じて、むしろ現実的な人間の成長と可能性を描いた点にあります。
連載17年という時間はキャラクターたちの成長に説得力を与え、読者もまた彼らとともに歩んできたような感覚を生み出しました。


出会い頭のセールがきっかけとなって改めてこの作品の価値に気づかされた今回の体験。
読者それぞれの17年とともに歩んできた本作は、間違いなく漫画史に残る意義深い作品だと言えるでしょう。


そしてこの購入のせいで数日何も出来なかったのでそれを記事にしてやりました。

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