Cities: Skylines2(シティーズスカイライン2)

Cities: Skylines 2「Ultimate Regional Pack Battle」は本当に必要?善意のクリエイターを競争させる企画への疑問

Cities: Skylines 2「Ultimate Regional Pack Battle」は本当に必要?コミュニティ分断を招く懸念も

公式のXが更新されていたので記事にしました。

個人的にちょっと思うところがあったのでそれを内容にしてます。批判的な文章なので嫌いな方は読まないでください。

開発休止期間中に発表された投票イベントの問題点

Cities: Skylinesシリーズの開発元Colossal OrderとパブリッシャーのParadox Interactiveは、7月および8月上旬にかけて予定されているアップデートやパッチの配信を一時停止することを発表している。

これはスウェーデンとフィンランドの労働法および労働組合協定に基づく措置で、従業員には4週間連続の夏季休暇権が保障されているためだ。

開発・パブリッシャー側の人員配置が大幅に減少するこの期間中、万が一ゲームに重大なバグが発生した場合の対応体制を確保できないことから、同社では毎年この時期のアップデート配信を避けている。

マーケティング部門の「浅い」戦略推論

そんな中、公式Xアカウント(@CitiesSkylines)が7月1日に投稿したのが「Ultimate Regional Pack Battle」と呼ばれるコミュニティ投票イベントの開催予告だ。

この企画の背景には、おそらくマーケティング部門の以下のような「表面的な」思惑があったと推測される。

狙い1:低コストでのエンゲージメント維持 – 開発が停止する7-8月の間、新しいコンテンツ制作なしに話題性を確保し、プレイヤーの関心が他のゲームに流れることを防ぐ。

狙い2:データ収集の口実 – どの地域・建築スタイルが人気かを「科学的に」測定し、今後の地域パック開発の優先順位決定に活用する。

狙い3:競争による話題化 – 単純な「みんな素晴らしい」ではなく、勝敗を決めることで議論を呼び、SNSでの拡散効果を狙う。

しかし、これらの意図は非常に短絡的で、長期的なコミュニティ運営の観点から見ると致命的な欠陥を抱えている。

「Ultimate Regional Pack Battle」が抱える深刻な構造的問題

この「Cities Around The World」ツアーの一環として提供された8つの無料地域パックの中から、最も人気の高い地域パックをコミュニティ投票で決定するトーナメント形式の企画には、看過できない問題がいくつも存在する。

善意のクリエイターを不必要な競争に巻き込む非道徳性

投票に参加する地域パックは、France(フランス)、Germany(ドイツ)、United Kingdom(イギリス)、Eastern Europe(東欧)、Japan(日本)、China(中国)、Southwest USA(米国南西部)、Northeast USA(米国北東部)の8つ。

これらの地域パックは、MacwelshmanやRik4000(UK Pack)をはじめとする数十名の有才なコミュニティクリエイターが善意で無償提供している貴重なコンテンツだ。

各パックの制作者リストを見ると、GÈZE、GRUNY、JERENABLE、REV0、ARMESTO、FEINDBOLD、TITAN、KAMINOGI、KOMA、ALEX_BY、KOMURKA、ROBAL、TOMAS13TO、RICHARDSHI、VICTORIACITY、BADPEANUT、DARF、BSQUIKLEHAUSEN、SMILIES、SNIGGLEDIGIT、BADI_DEA、KING LENO など、実に多くのクリエイターが関わっている。

これらの制作者たちは、自分の時間と創造性を無償で提供し、世界中のプレイヤーに喜んでもらうことを純粋な動機として作品を作り上げた。

しかしなぜこれらの善意に基づく素晴らしい作品をわざわざ競争させ、人為的に「勝者」と「敗者」を作り出す必要があるのだろうか。

「負けた」地域パックのクリエイターは、自分の作品が他より劣ると公式に認定されたような気持ちになり、今後のコンテンツ制作意欲に深刻な悪影響を与える可能性が極めて高い。

さらに問題なのは、こうした企画に制作者たちの事前承諾があったかどうかが不明瞭な点だ。

善意で提供した作品が、後から勝手に「バトル」に使われることについて、クリエイターたちが本当に納得しているかは大いに疑問である。

地域・国別人口による不公平な競争構造の致命的欠陥

さらに深刻な問題は、この投票が事実上「母国応援投票」になってしまう構造的欠陥だ。

人口格差による不平等 – アメリカ系パック(Southwest USA, Northeast USA)は英語圏の巨大なプレイヤー人口を背景に圧倒的に有利となる。一方で、Eastern Europeなど相対的にプレイヤー数の少ない地域のパックは最初から著しく不利な立場に置かれる。

言語バリアの影響 – 英語でのSNS拡散力、情報共有の速度、組織票の動員力など、言語的な優位性が投票結果を大きく左右する。※そこまで熱狂的なファンがいるかは分かりませんが。

文化的愛着の利用 – 純粋な「パックのクオリティや創造性」ではなく、「自分の出身地・好きな国への感情的な愛着」が投票基準となってしまう。

これらの要因により、最終的には単純な「数の論理」による結果しか生み出されず、制作者の努力や作品の品質とは全く関係のない結果になる可能性が高い。

コミュニティ内でも微妙に批判とも思える意見も出ているようで、Paradox Interactiveのマーケティング手法に対する不信が高まっている。

制作者コミュニティへの配慮の完全な欠如

最も深刻なのは、この企画が制作者コミュニティの心理的負担を全く考慮していない点だ。

地域パックの制作は、単なる「アセット作成」ではない。

各制作者は自分の故郷や愛する地域の建築文化を丁寧に研究し、その魅力を他の人にも伝えたいという純粋な想いで作品を作り上げている。

UK PackのMacwelshmanとRik4000が「英国の建築遺産への敬意」を込めて制作したように、どの地域パックにも制作者の深い愛情と文化的アイデンティティが込められている。

そうした作品を「バトル」という名の下で競わせることは、制作者の尊厳と創作意欲を踏みにじる行為に他ならない。

さらに問題なのは、公式フォーラムやDiscordでこの企画について制作者たちがどう感じているかの声が、現時点で表立って確認できないことだ。

これは制作者たちが企業との関係を考慮して批判を控えている可能性、あるいはそもそも事前相談なしに企画が進められた可能性を示唆している。

より良い代替案は無数に存在した

開発休止期間中にコミュニティエンゲージメントを維持したいなら、対立構造を生まない方法はいくらでもあったはずだ。

「8地域パック感謝祭」 – 全パックを平等に称え、制作者にスポットライトを当てる企画

「制作者インタビューシリーズ」 – 各パックの制作秘話、込められた想い、技術的チャレンジを紹介

「あなたの街に最適な地域パック診断」 – プレイヤーの好みに基づいて最適なパックを推奨するインタラクティブな仕組み

「地域パック活用コンテスト」 – 各パックを使った創造的な都市建設を競うポジティブな企画

「世界建築文化学習企画」 – 各地域の建築史や文化背景を学べる教育的コンテンツ

これらの代替案なら、全ての制作者とファンが価値を感じられる包括的なアプローチとなったはずだ。

公式は投票参加者に対し「投票する前にすべての地域パックを試してみてください!」と呼びかけているが、それならなおさら競争させる理由が存在しない。

全てが素晴らしいなら、なぜ順位付けが必要なのか?この矛盾した姿勢こそが、企画の本質的な欠陥を物語っている。

表面的なマーケティングが招く長期的ブランド毀損リスク

開発面では、当初6月にリリース予定だった「Bridges & Ports」DLCが第4四半期(Q4)に再延期となっており、コンソール版のリリースも「夏以降」に延期されている状況だ。

本来であれば、こうした重要なコンテンツの開発進捗や品質向上、技術的問題の解決にリソースと注意を集中すべき時期に、コミュニティを分断しかねない表面的なイベントを実施する判断には深刻な疑問が残る。

Cities: Skylines 2は発売当初から技術的問題、最適化不足、期待を下回る機能で混合評価を受けており、コミュニティとの信頼関係再構築が最優先課題となっている。

そんな状況で善意のクリエイターを競争に巻き込み、地域間・文化間の対立を煽るような企画は、短期的な話題性と引き換えに長期的なブランド価値を毀損するリスクが極めて高い。

特に、多様性と包括性が重視される現代のゲーム業界において、文化的背景を持つコンテンツを「バトル」として消費する姿勢は、企業の価値観そのものを疑問視されかねない。

真のコミュニティエンゲージメントとは、全ての参加者が尊重され、価値を感じられる包括的なアプローチであるべきだ。

競争ではなく協調、排除ではなく包含、消費ではなく感謝——これらの価値観に基づいた企画こそが、持続可能なコミュニティ関係を築く礎となるはずである。

制作者への敬意と感謝こそが求められる対応

この「Ultimate Regional Pack Battle」企画は、根本的に方向性を見直すべきだ。

MacwelshmanやRik4000をはじめとする数十名の制作者たちの善意と才能に対して、競争ではなく感謝と敬意を示すアプローチに転換する必要がある。

投票の詳細や開催期間については公式SNSアカウントからの続報が予告されているが、コミュニティとしては建設的な代替案の提示と、制作者の心情に配慮した企画変更を求めていくべきではないだろうか。

Cities: Skylinesシリーズの真の価値は、開発者とコミュニティが協力して創り上げる創造的な都市建設体験にある。

その価値を守り育てるためにも、分断ではなく結束を生む企画運営が強く望まれる。


Cities: Skylines 2は現在PC(Steam、Windows Store)版が配信中。コンソール版(PlayStation 5、Xbox Series X/S)は夏以降のリリース予定となっている。

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